映画・番組

2009年9月22日 (火)

ドキュメンタリー3本立て 「嗚呼満蒙開拓団」「花と兵隊」「昭和八十四年」

 あまりやらないことですが、渋谷で映画を朝から夕方まで3本連続で見ました。友人に声をかけてみたところ、一緒に見てもらえることになり、2本目からは3人で。すべて戦争が関係あるドキュメンタリーです。上映館等の詳細は各公式サイトを参照してください。とりあえずまず、各タイトル、公式サイト、スタッフ等の情報から。

 ドキュメンタリー映画「嗚呼満蒙開拓団」
 http://www.jiyu-kobo.com/ (自由工房のサイト)
 http://jiyu-kobo.cocolog-nifty.com/mannmou/ (ブログ)
 
出演:池田澄江、菅原幸助、石原政子、井上静江、魯万富、徐士蘭、加藤聖文、樗沢仁、山下クニ、金丸千尋、金丸キヌ子、吉泉照雄、松田ちゑ、崔鳳義、丸沢恒好、丸沢栄子、深山信雄、山川禎一、宮腰直子、馬場弘子、原田清治、原田麻里、飯白栄助、劉軍

製作:工藤充、演出・ナレーション:羽田澄子、撮影:相馬健司、整音:滝澤修、ピアノ:高橋アキ、吹替:喜多道枝、製作・配給:株式会社自由工房、2008年、120分、DVCAM 
協力スタッフ
演出:佐藤斗久枝、石井かほり、撮影:西尾清、コーディネーター:奥村正雄、中国語翻訳:仲偉江、中国語通訳:佐渡京子 

 ドキュメンタリー映画「花と兵隊」
 http://www.hanatoheitai.jp/

出演:坂井勇、中野弥一郎、古山十郎、藤田松吉、伊波廣泰、花岡稔、監督・撮影・編集:松林要樹、編集:辻井潔、プロデューサー:安岡卓治、音楽:津嘉田泰三、タイトルデザイン・宣伝美術:成瀬慧、翻訳:秋庭孝之(タイ語)、関口輝比古(北タイ語)、ウィン・ダン(ビルマ語)、英字幕:松下希和、久保陽子、製作:記録映画「未帰還兵」製作委員会、2009年、106分、DVCAM

 ドキュメンタリー映画「昭和八十四年 1億3千万分の1の覚え書き」
 http://d.hatena.ne.jp/s84/
出演:飯田進ほか、構成・演出:伊藤善亮、企画・撮影:若尾泰之、制作・取材:林昌幸、MA:協映スタジオ、音楽:乗松安土、鈴本智明、四谷聡、2009年、84分、DVCAM

 見ていただければ分かるのですが、最初から順番に少しずつ上映時間が短い(笑)これは見る側にとっては非常にありがたいことになりました。

 モーニングショーで10:45~渋谷UPLINK Xで羽田澄子監督の「嗚呼満蒙開拓団」。先日、岩波ホールの最終日最終回に行ったのですが、不覚にも途中で寝てしまい、一部覚えていない・・・ということで再挑戦。

 テーマは、満州事変後日本が建てた傀儡国家満州国を「王道楽土」と宣伝し、当初は自発的に、後にはかなり強制的に移住させる政策が行われました。それの代表的なものが満蒙開拓団です。

 彼らは戦争末期に、根こそぎ動員といわれる、数あわせの為とも言われる動員に狩り出され、彼女らや老幼は、8月9日のソビエト連邦の参戦により、一気に防衛線を下げた関東軍(満州の日本軍)に置いて行かれ、ソ連の攻撃を受けながら、日本への引き揚げを余儀なくされました。少なくない人々はその途中で、ソ連の攻撃や暴行、さらには「匪賊」の攻撃、過酷な自然環境、慢性的な飢えなどによって命を落とし、また連れて逃げられなくなった多くの子どもが中国大陸に置き去りにされ、ある者はそのまま命を落とし、ある者は中国人に助けられ、これが中国残留日本人孤児となります。また、女性で、生きるために中国人と結婚した人も多く、この人たちを中国残留婦人と呼ぶこともあります。

 羽田監督は、満州の最南端、大連で生まれ育ち、引き揚げの経験もあり、永年気にはなっていたというこのテーマに満を持して取り組みました。

 が、これがまた、何とも。・・・長い。

 確かに、満蒙開拓団とは何か、その後の引き揚げの苦労や、現状まで幅広く網羅されてはいるのですが、話が行きつ戻りつ、あまり上手くまとまらない。証言を紹介するのと、その時点時点での状況を紹介することと、歴史事項の説明がまだ上手く消化されず、練れていない印象。

 もちろん、一見の価値はありますし、その証言は凄まじいものです。「集団自決」の証言もあります。有名なところでは、沖縄、満州、そしてバンザイクリフで有名なサイパン島での自決が知られていますが、沖縄での「自決」が「軍命令がないから、勝手にやったこと」などという愛国心のかけらも、歴史の洞察力もない連中には分からないのでしょうが、満州ので「自決」も凄まじい内容です。そして、まだまだ知られていないと思います。知らない方はぜひ見てください。また、長野県の人も。長野は一番多くの開拓団を出した県です。

 続いては、タクシーで移動。着いてすぐコンビニで昼食を買い、シアターイメージフォーラムの中へ。13:20~、松林要樹監督の「花と兵隊」を見る。

 この作品には前史的な作品があり、それが今村昌平監督がテレビ番組として製作した「未帰還兵を追って マレー篇/タイ篇」(1971年)、「続・未帰還兵を追って」(1975年)です。「花と兵隊」はその時取材された人も含め、現在の未帰還兵の方々が、タイなどでどのように晩年を過ごしているのかを描いています。可能ならぜひ、今村昌平監督の「未帰還兵」シリーズもご覧下さい。私は数年前に「未帰還兵を追って マレー篇/タイ篇」を自主上映会で見る機会がありました。

 未帰還兵とは、敗戦後様々な理由により日本に帰還しなかった元兵士のことです。理由としては、戦犯に問われるのではないかというもの、連合軍の労役に耐えられずに逃亡、アジアの独立戦争に参戦、家族も帰る家もなかったからなど様々です。

 最晩年を迎えたみなさんは、何人かは「未帰還兵を追って」にも登場する方。特に藤田松吉さんは、記憶の通りだと「未帰還兵を追って」では、かなり怒鳴りながらカメラやインタビュアーに向かっていた印象があったのですが、相当丸くなられた感じ。

 現地での生活が細かく描かれ、彼らと関係のある人々、奥さんや仕事の仲間などがその人柄や人生を語り、一層その生活を豊かに浮き彫りにする。だいたいの方が軍隊で学んだ手に職を活かして最初は生活され、人によっては生活がある程度確立したところで、別の仕事に移られたりもしている様子。

 やや、話が行きつ戻りつしたり、序盤は坂井さんを中心に話が進むのに、中盤以降ランダムに何人もの方が登場されたりと、ペースの波があり、少しこんがらがったりしましたが、カメラワークもある程度安定しており、編集で適度な長さにされていることも好感。今村作品同様の高評価を与えるのもやぶさかでないですし、両方見ることで、戦争とは、戦後とは、ということを考える格好の材料になると思います。

 「花と兵隊」の後は、少し時間が空くので移動途中で食事を摂って、再びUPLINK Xへ。16:40~、伊藤善亮演出の「昭和八十四年」を見る。

 これはこれまでの2作から一転、たった1人の人を追いかけるドキュメンタリー。その人は飯田進さん。神奈川県の社会福祉法人の理事長をされています。御年86歳。いくつかの病気をくぐり抜け、定期的に病院に検査に通うものの、まだまだお元気。

 この飯田さんは、学校が合わずに旧制中学校を中退、「アジア解放の理想に燃える青年だった」ために、軍属になるのを当然と思い、南方に派遣される。その南方で道案内役の村長を斬りつけて殺害。それ自体は「当時は当然と思っていた、軍の秘密を漏らすわけにはいかない」と当時は自然に考えていたという。しかし、敗戦。戦犯として捉えられ、裁判で重労働刑に。のち日本に移送され、スガモプリズンに収容される。スガモプリズンで待遇改善や文化運動に取り組み、自らの犯した罪にも向かい合うことに。

 出獄後も朝鮮人BC級戦犯の仲間を助けたりもしていますが、平凡なサラリーマン時代がやってきて、結婚もする。そして子どもが生まれ、家庭を築いていったのもつかの間、長男が手に障害を持って生まれてくる。それは後にサリドマイドの薬害と判明。患者の親の会を結成し、後には国に対する裁判闘争をまとめていくことに・・・。

 このような波瀾万丈な人生を、時折の用語説明の字幕を交えつつ、84分にまとめる。息子との葛藤など、戦後の部分に大半が割かれ、戦争のドキュメンタリーと言うよりも、一代記(ライフヒストリー)として見事な作品。

 ただし、一部の説明が不正確ないしは疑問が残る。例えば「大東亜戦争」を「太平洋戦争の呼称の一つ」とは普通は言わず、「当時、太平洋戦争を指した呼称」といった説明が一般的。そうした点が字幕で数カ所散見されました。

 また、最初の導入ででてくる大学院生は、話に入る舞台回しとしてはいいのですが、途中に出てくるところはやや蛇足か。飯田さんの印象を語らせて、そのまま飯田さんのインタビューにつなげた方がすっきりするかなと思います。

 ただ、この3本の中では、最も満足度が高い。飯田さんの人生や考え方、それがよく煮詰められた言葉で語られ、時に応じて飯田さんの身の回りの人も登場し、複眼的な視点を提供してくれる。また、平和を考える活動はいくらでも裾野が広がることを示してくれる。何より、戦争の問題を考えるとき、64年前に何があったかだけでなく、その後どういう人生を歩んだかも含めて考えるという面でも、問題提起的だし、刺激を受けた部分も多い。

 戦争の問題を考えるときに、それと今や未来との繋がり、体験を語るその人の人柄や戦争後の人生というものもいろいろ考えさせられるヒントは多くあります。みなさんも気になるドキュメンタリーがあったらぜひ見てみてください。

 これまでの公開作でのおすすめは「ひめゆり」です。逃げ回った現場に足を運び、その場で証言をした映像をつないで作られたドキュメンタリー。一般の国民も巻き込んだ戦いは、上記のようにサイパンや満州でもあったわけですし、空襲被害などもあるわけですが、注目を集めるテーマとしても沖縄戦のことを知るのは悪いことではありません。

 また、劇映画では、特に戦争体験の後を描いたという意味で、黒木和雄監督の「父と暮せば」もいいでしょう。少ない役者さんで井上ひさし原作の舞台を映画化。「なぜ生き残ったのか」という答えのない大きなテーマ。黒木監督も目の前で級友を機銃掃射で失った1人で、当時小学生であったにも関わらず、その思いに囚われ、自分を責めたと言います。

 今の社会で、心の傷、心の病気というのは必ずしも他人事ではないという認識になりつつありますが、そういうことが言われる前からこうした思いに心のバランスを崩した人はいたし、悩みを抱えて苦しんでいた人も多いのだと考えると、戦後の日本も違った見方で見えてくるような気がします。

 珍しく長く書きましたが、このブログでは初のドキュメンタリー評でした。

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